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5フォース分析の例|業界の区切り方で変わる参入・撤退の判断

公開日 2026年10月2日更新日 2026年10月3日読了目安 約12分執筆: ラトリス編集部

5フォース分析の例|業界の区切り方で変わる参入・撤退の判断

5フォース分析は、業界を「どこまでの範囲で見るか」を決めた時点で、答えの半分が決まります。例を読むときは、5つの力の中身だけでなく、どう業界を区切っているかを見ておくと、自社に当てはめやすくなります。

この記事では、業種だけを決めた仮の例で5つの力を一通り整理し、分析の結果を参入・撤退の判断にどうつなぐかまで説明します。

5フォース分析の例の要点

  • 5フォース分析とは、業界の収益性を決める5つの力(買い手・売り手・新規参入・代替品・既存競合)を見て、その業界が儲かりやすい構造かを確かめる枠組みです
  • 例を作る前に決めるのは業界の境界です。広く引くか狭く引くかで、競合の数も代替品の範囲も変わります
  • 業界の境界を2通り以上で引き、結論が変わるかを見ておくと、分析の偏りに気づきやすくなります
  • 分析の結果は、どの力が利益を削るかを特定し、自社がその力を弱められるかを確認して、参入可否と撤退条件に落とします
  • 分析は一時点の切り取りです。参入後に動く前提は、撤退条件として先に書き出しておく考え方が一般的です

この記事でわかること

  • 5つの力の意味と、見るときの問いの立て方
  • 業種だけを決めた仮の例(地方の食品メーカーが冷凍惣菜に参入する場合)での当てはめ方
  • 業界の区切り方で結論が変わる理由と、確かめ方
  • 分析結果を参入・撤退の判断と撤退条件につなぐ手順
  • 3C分析・SWOT分析など、近い枠組みとの使い分け

想定読者: 新規参入の可否や既存事業の見直しを社内で説明するために、5フォース分析の結果を使いたい事業責任者・企画担当の方です。枠組みを学び始めた方にも読めるようにしています。

5フォース分析とは|見る5つの力

5フォース分析とは、業界の収益性が5つの競争要因の強さで決まると考え、その構造を整理する枠組みです。経営学者のマイケル・ポーターが提唱し、1979年の論文「How Competitive Forces Shape Strategy」と、のちの著書『競争の戦略』で広まりました(出典: ファイブフォース分析の解説、Wikipedia)。2008年には Harvard Business Review 誌で改めて整理されています。

5つの力は、次のとおりです。

力見る問い強いと起きること
買い手の交渉力販売先は少数に集中していないか。乗り換えやすいか値下げや条件の要求が通りやすくなる
売り手(供給者)の交渉力原材料や部品の供給元は少数か。代わりが利くか仕入れ価格が上がりやすくなる
新規参入の脅威新しい参入者が入りやすいか。参入障壁は低いか利益が出ていても、競争相手が増えて薄まる
代替品・サービスの脅威別の手段で同じ需要を満たせるか価格の上限が押さえられる
既存競合企業間の敵対関係競合の数と規模は。値下げで争いやすい構造か価格競争や広告・開発費の競り合いが起きる

5つの力が全体として強い業界は、売上が伸びても利益が残りにくい、と整理するのが基本の読み方です。

講義室の座席と演台
枠組みは、学ぶだけでなく、自分の業界に当てはめて初めて使えるものになります(写真: jarmoluk / Pixabay)

5フォース分析の例|業種だけの仮の例で5つの力を整理する

ここでは例として、地方の食品メーカーが、成長が見込まれる冷凍惣菜の分野への参入を取締役会に諮る場面を想定します。会社名や数値は置かず、見立ての書き方だけを示す仮の例です。

業界は「冷凍惣菜」と狭く引いて、5つの力を次のように整理します。

力仮の例での見立て参入判断への含意
買い手の交渉力販売先が大手小売やコンビニに集中しており、強い価格や取引条件で押し込まれやすい。販路を分散できるかが論点
売り手の交渉力主要な原材料の供給元が少数に偏っている仕入れ価格の上昇を価格に転嫁できるかが論点
新規参入の脅威他分野の食品メーカーが設備を転用して入ることがある参入後に競合が増える前提を置いておく必要がある
代替品の脅威外食、総菜売り場の出来合い品など、食卓に並ぶ別の選択肢がある冷凍ならではの価値(日持ち・手間の少なさ)で選ばれ続けるかが論点
既存競合の敵対関係大手が価格で争いやすい同じ土俵で価格競争になれば体力勝負になる

この表を作るときのコツは、各セルの文を「強い・弱い」の評価で終わらせず、右の列に「それが判断のどこに効くか」を書くことです。5フォースは整理の道具なので、評価のまま止めると、会議で「で、参入するのか」と聞かれたときに答えられません。

なお、この見立ては仮の例のものです。実際の分析では、販売先の集中度や供給元の数などを、業界団体の資料や自社の取引実績で裏づけてから書くことになります。

業界の境界の引き方で、結論が変わる

5フォース分析は、業界をどこで区切るかによって、5つの力の見え方が変わります。この点は、解説記事でも注意点として一般に指摘されています。

先ほどの仮の例で、境界を2通りに引いてみます。

業界の境界の引き方を分解した図。業界の境界の引き方(広く引く:食品製造全体(競合は多数、代替品は少なく見える)、狭く引く:冷凍惣菜(競合は絞られる、外食・総菜も代替品に))
業界の境界の引き方で見え方が変わる(仮の例)

食品製造全体で見ると、競合は非常に多い一方、総菜などの多くは業界の内側に入るため、代替品として別に考える範囲は狭くなります。冷凍惣菜に絞ると、見かけの競合は限られますが、外食や総菜売り場の出来合い品が代替品として視野に入り、考えるべき代替品は増えます。どちらの境界で見るかによって、「競争が激しい業界」にも「手を打てば戦える業界」にも見えてしまいます。

倉庫で台車を押す作業者
どこまでを一つの業界とみなすかで、分析の結果は変わります(写真: Alexander Isreb / Pexels)

境界を決めるときは、次の3点を確認しておくと判断しやすくなります。

  • 誰の需要を奪い合っているか: 同じ買い手の同じ用途を取り合う相手は、製品が違っていても同じ業界とみなす
  • 自社の参入対象はどこか: 実際に商品を並べる売り場や取引先の単位で区切る
  • 広い境界と狭い境界の両方で見たか: 2通りで引いて結論が変わるなら、その違いが議論のいちばんの論点になる

結論が変わらなければ、その分析は境界に左右されにくいと言えます。結論が変わるなら、どちらの境界が自社の実態に近いかを、取引先や営業現場に聞いて確かめるのが次の一手です。

分析結果を参入・撤退の判断につなぐ手順

分析で止まらず判断につなぐには、「どの力が利益を削るか」から入るのが一般的です。5つの力を全部同じ重さで見るのではなく、利益をいちばん押し下げている力を特定します。

  1. 境界を2通り以上で引く: 広い境界と狭い境界で5つの力を整理し、結論が変わるかを見る
  2. 利益を削る力を特定する: 仮の例なら、買い手の集中や価格競争のように、収益に直接効く力を選ぶ
  3. 自社がその力を弱められるか確認する: 買い手が集中しているなら販路を分散できるか、価格競争が起きやすいなら価格以外で選ばれる理由があるか、を見る
  4. 自社に勝てる資源があるかを確かめる: 業界が魅力的でも、自社に強みがなければ参入は成り立たない。ここは3C分析やVRIOの出番になる
  5. 参入後に動く前提を撤退条件にする: 新規参入者の増加や代替品の広がりなど、参入後に変わりうる前提を、シェアや価格水準の下限として事前に書き出す

手順5がとくに大切です。5フォース分析は、参入時点の構造を切り取った答えです。参入後に前提が動いたとき、撤退条件を決めていなければ、判断が遅れて損失が広がりやすくなります。

撤退の側から使う場合も、型は同じです。既存事業の5つの力を見直し、参入時に置いた前提のうち、崩れたものはどれかを確認します。崩れた前提が自社の努力で戻せる種類のものか、業界構造の変化なのかを分けると、撤退か立て直しかの議論が整理されます。

5フォース分析の使いどころと限界

5フォース分析が答えられるのは「この業界は構造として儲かりやすいか」までで、「自社が勝てるか」までは答えません。

使いどころ

  • 参入・撤退の前に、業界の収益構造を整理して社内で共通認識をつくる
  • 利益を削っている力を特定し、打ち手の方向を絞る
  • 複数の候補の業界を同じ物差しで比べる

限界

  • 分析に体系的なやり方がなく、主観的な判断に頼りやすいと指摘されています(出典: ファイブフォース分析の解説、Wikipedia)
  • 業界の区切り方で結果が変わる
  • 一時点の切り取りなので、参入後に動く前提は織り込めない
  • 自社の強みや資源は見ない

限界のうち、境界の引き方と前提の動きは、先ほどの手順で一部は補えます。ただ、「自分の業界の中だけで見ていて、そもそも前提が妥当か分からない」という状況は残ります。そこは後ほどの章で扱います。

近い枠組みとの使い分け

どの枠組みも、見る対象が違います。5フォースの結果は、ほかの枠組みの入力にもなります。

枠組み見るもの5フォースとの使い分け
5フォース分析業界の収益構造参入・撤退の前に、その業界が儲かりやすい構造かを見る
3C分析顧客・競合・自社業界の魅力ではなく、自社の勝ち筋を探る
SWOT分析内部の強み・弱みと、外部の機会・脅威5フォースの結果を、外部の機会・脅威に整理して使う
PPM分析事業間の資金配分複数の事業を持つ会社の配分判断に使う。5フォースは一つの業界を見る
バリューチェーン・VRIO自社の競争優位の源泉業界が魅力的でも、自社に勝てる資源があるかを確かめる

業界が魅力的かを見るのが5フォース、自社が勝てるかを見るのが3C・VRIOという分担で考えると、混乱しにくくなります。

前提が外れた事例から考える|他分野の事例と失敗の型

5フォース分析が出すのは、境界と前提を置いたときの答えです。判断を誤るのは、その前提が外れたときです。ここでは、前提が動いた例として、ラトリスで見つかった失敗の型を2件紹介します。

価格競争の激化で前提が崩れた例

剣道用防具メーカーのオガタ武道具工業は、海外での評価が高く、早くから海外で防具を製造していたものの、価格競争の激化などを理由に2011年に事業を停止したと報じられています(Wikipedia「オガタ武道具工業」)。先行していても、競争の力が変われば前提は崩れ得る、という例として読めます。

進出先の競合の動きが見えにくかった例

高崎水力電気は、低料金で好調だった地域電力会社でしたが、隣の前橋市へ進出した後、1910年ごろに新規開業した競合との間で価格競争になり、減収減益と営業区域の喪失を招いたとされています(Wikipedia「高崎水力電気」)。進出前の静的な分析には、進出先の競合の動きが表れにくい、という論点に使えます。

どちらも現在の経営環境とは時代も業界も異なります。直接の比較にはなりませんが、「同じ土俵での価格競争による消耗」という失敗の型が、先行者にも進出する側にも起きたことは確認できます。出典の記事にある範囲の事実なので、個別の経営判断の是非を述べるものではありません。

自分の業界の中だけで調べていると、こうした前提の外れ方に出会いにくくなります。同じ構造の事例は、違う業界にあることが多いためです。ラトリス(Latris)は、同じ言葉ではなく同じ構造で、他分野の事例と失敗の型を探す構造知検索サービスです。一文の問いを入力すると、次の5層レポートが返ります。

  1. 問題の構造化: 「誰が・何を・どう動かすか」に翻訳する
  2. 関連知見: 前提の確認や相場観、論点の抜けを補う
  3. 構造の似た事例: 業界を越えた同型事例を、参照元記事つきで示す
  4. 失敗の型: 同じ構造で起きた失敗パターンを示す
  5. 統合・示唆: ①〜④をまとめ、与件に照らした示唆や次の一手を示す

5フォースの結果を持ち込んで、「この前提が外れた事例はあるか」「同じ構造でどこが分かれ目だったか」を確かめる使い方ができます。業界によっては近い事例が見つからないこともあるため、結果は構造の対応を確認しながら読むのが前提です。判断は人が行い、ラトリスは材料を出典つきで揃えます。レポート後は、同じセッションで壁打ちも続けられます。

レポートの例は こちら で見られます。月額98,000円(税別)で、14日間の無料トライアルがあり、Claude の契約は別途必要です。試す場合は 料金とトライアル を、事例を見ながら相談したい場合は デモ依頼 をご覧ください。

こんな人におすすめ / おすすめしない人

こんな人におすすめ

  • 新規参入や撤退の判断を、社内で説明できる形にしたい事業責任者・企画担当
  • 5つの力を整理したが、結果をどう判断に使うか迷っている方
  • 業界の区切り方で結論が変わると感じ、その確かめ方を知りたい方

おすすめしない人

  • 5フォースだけで参入可否が決まると期待している方。この枠組みは業界の構造までしか見ません
  • 自社の強みや資源をまず知りたい方。先に3C分析やVRIOを使うほうが合っています

よくある質問

5つの力は、すべて同じ重さで見るのですか。

いいえ。業界によって、利益を削る力は違います。5つとも整理したうえで、収益にいちばん効いている力を特定し、その力に対して自社が打てる手があるかを確認する形が実務的です。

実在企業を題材に、5フォース分析の練習をしてもよいですか。

練習として公開情報を整理すること自体は構いません。ただ、外部の情報だけで特定の会社の強み・弱みを評価することになるため、結果を断定的に扱わないほうが安全です。この記事では、業種だけを決めた仮の例を使っています。

小規模な事業や、サービス業でも使えますか。

使えます。見る単位は、会社の規模ではなく、自社が参入または継続を考えている市場です。サービス業なら、仕入れ先を「人材や場所の確保」に置き換えるなど、5つの力の意味を自分の業態に翻訳して使います。

分析は、どのくらいの頻度で見直せばよいですか。

決まった頻度はありません。新規参入者の増加、代替品の登場、主要な取引先の動きなど、前提にした事柄が変わったときに見直すという考え方が一般的です。撤退条件として前提を書き出しておけば、見直しのきっかけも決まります。

業界の境界は、最終的にどちらに決めればよいですか。

広い境界と狭い境界の両方で結論を出し、違いがあれば、取引先や営業現場の実態に近いほうを選びます。どちらを選んだかと、その理由を分析の冒頭に書いておくと、後から前提を見直すときに役立ちます。


5フォース分析は、参入や撤退の議論を始める土台になります。境界と前提を明示し、前提が外れたときの動きまで書き出しておくと、分析が判断に使える形になります。

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