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ブルーオーシャン戦略の事例|競争のない市場は見つけるか、作るか

公開日 2026年10月2日更新日 2026年10月3日読了目安 約12分執筆: ラトリス編集部

ブルーオーシャン戦略の事例|競争のない市場は見つけるか、作るか

ブルーオーシャン戦略は、競争のない市場を「見つける」ものではなく、業界の常識を組み替えて「作る」ものと説明されます。事例を読むときは、成功の中身より先に、需要が本当にあったのか、追随されたあとに何が残るのかを確かめておくと判断しやすくなります。

ブルーオーシャン戦略の要点

  • ブルーオーシャン戦略とは、既存市場で競合とシェアを奪い合うのをやめ、競争が意味を持たない市場空間を作る考え方です
  • 道具は戦略キャンバスと、取り除く・減らす・増やす・付け加えるの4つのアクションです
  • 原典に載る事例は成功例が選ばれているという指摘があります。失敗例と並べて読むのが前提になります
  • 投資の前に、非顧客が対価を払うかと、追随されたときに残る強みを確かめます
  • 撤退条件は、設備や人員に投資する前に書いておく考え方が一般的です

この記事でわかること:

  • ブルーオーシャン戦略の定義と、戦略キャンバス・4つのアクションの使い方
  • 原典や解説で紹介されている事例の読み方
  • 競争のない市場を「見つける」のか「作る」のかの整理
  • 投資の前に確かめる項目と、使いどころの限界
  • 他分野の失敗の型から、前提の外れ方を確かめる方法

価格競争で利益が細り、新しい市場への投資を社内で提案しようとしている事業責任者や経営者を想定しています。

ブルーオーシャン戦略とは何か

ブルーオーシャン戦略とは、INSEAD の W. Chan Kim 氏と Renée Mauborgne 氏が2000年代半ばに提唱した、競争を無関係にする未開拓の市場空間を作る戦略です。既存市場で競合とシェアを奪い合う状態を「レッドオーシャン」、その反対を「ブルーオーシャン」と呼びます。

森の中の分かれ道
既存市場で競うか、別の市場を作るか。最初の分かれ道はここにあります(写真: Pixabay)

中心にある考え方がバリューイノベーションです。バリューイノベーションとは、差別化と低コストを同時に追い、両者のトレードオフをなくすことを指します。普通は、価値を上げればコストも上がると考えます。この枠組みでは、業界が当然としてきた要素を削ることでコストを下げ、浮いた分を顧客が本当に求める要素に回して、価値とコストを両立させようとします。

使う道具は2つです。戦略キャンバスとは、横軸に業界の競争要因、縦軸に提供水準を取り、自社と競合の価値曲線を描く図です。4つのアクション(ERRC)は、業界の常識を次のように見直す問いです。

4つのアクションを分解した図。4つのアクション(取り除く(当然視された付帯サービス)、減らす(使われない過剰な機能)、増やす(顧客が不満だった点)、付け加える(業界にない新しい価値))
4つのアクションの見直し方(業種だけの仮の例)

たとえば地方の食品メーカーを想定すると、取り除く対象は「業界の慣行で付けてきた付帯サービス」、増やす対象は「顧客が不満を持っていた点」といった形で書き出します。具体的な中身は業界ごとに変わるため、ここでは枠の使い方だけを示しています。

検討の進め方

進め方は、現状の価値曲線を描き、4つのアクションで書き換え、非顧客に当てて確かめる、という流れです。曲線を描くこと自体が目的ではなく、「業界が当たり前としてきた要素のうち、顧客が本当に対価を払っているのはどれか」を見える形にするのが狙いです。

  1. 競争要因を洗い出す: 業界の各社が競っている要素(価格、品揃え、納期、サービスなど)を横軸に並べます
  2. 現状の価値曲線を描く: 自社と主な競合の提供水準を戦略キャンバスに描き、曲線がどれだけ似ているかを見ます
  3. 4つのアクションで見直す: 取り除く・減らす・増やす・付け加えるを、アクション・マトリックスに書き出します
  4. 非顧客に当てて確かめる: 今は使っていない人から、使わない理由を直接聞きます
  5. 小さく試して判断する: 試作や予約などで対価を払う意思を確かめ、投資の段階と撤退条件を決めます

4と5は、解説記事では軽く触れられるだけのことが多い部分です。しかし、あとで述べるとおり、判断の分かれ目になるのはここです。

原典や解説で紹介されている事例の読み方

原典や国内の解説で紹介される事例には、シルク・ドゥ・ソレイユ、イエローテイルのワイン、任天堂の Wii などがあります。国内の解説では QB ハウス、カーブス、Zoff なども例に挙がります。ここでは、これらがどう説明されているかだけを紹介し、個社の成否や現在の状況は評価しません。

紹介のされ方には共通点があります。シルク・ドゥ・ソレイユは、サーカスの動物ショーやスター出演者を外し、大人向けの高単価な舞台にした例として説明されています。Wii は、演算性能よりもモーション操作を重視した例とされます。どの例も、業界が当然としてきた要素を外し、別の要素を足した、という形で語られます。

ただし、事例を読むときには注意が必要です。この理論には、次のような指摘があります。

  • 成功例が選ばれており、失敗した試みとの比較対照がない(選択バイアス)
  • 失敗率を測れず、成功を事後に説明する理論で反証しにくいとの見方がある
  • 市場を認知させるブランドやコミュニケーションの作業が前提にされがち
  • Hamel と Prahalad の「ホワイトスペース」など、先行する概念と重なるという指摘がある

成功事例を何件読んでも、「同じことをして失敗した会社が何社あったか」はわかりません。事例集が教えてくれるのは考え方の型であって、自社で成り立つかどうかの根拠ではない、と割り切って読むほうが安全です。

競争のない市場は「見つける」のか「作る」のか

ブルーオーシャン戦略の立場では、競争のない市場は探して見つけるものではなく、非顧客層に向けて価値曲線を変えることで作るものと考えます。既存市場の中にたまたま空いた隙間があるわけではない、という前提です。

実際の判断では、ブルーオーシャンは選択肢の一つにすぎません。自社の状況に合う選び方を、次の表で確かめてみてください。

判断の選択肢向く状況見落としやすい点
既存市場で競争を続ける需要が見えており、原価や販路などの強みがある同質化が進むと利益幅が縮む
既存市場の中で見直す(差別化・集中)顧客の不満や未充足が既存顧客の中にある競合も同じ軸を見ている
非顧客層に向けて価値曲線を変える業界が当然視する要素のコストが高く、使われない理由が明確需要の検証、認知拡大の費用、追随への備え
隣接領域への多角化既存の顧客か技術を共有できる顧客も技術も新しい非関連多角化は難度が高い
小さく試して判断する需要が未検証何を測れば進むかを事前に決めておく必要がある

「顧客の不満が既存顧客の中にあるか、それとも使っていない人の側にあるか」が、上の表で行を分ける大きな手がかりです。前者なら既存市場の見直しが先に来て、後者ならブルーオーシャン的な発想が候補になります。

投資の前に確かめることと、使いどころの限界

ブルーオーシャン戦略が教えてくれるのは「こういう設計がありえる」までで、その設計に需要があるか、続くかは別に確かめる必要があります。投資を決める前に、次の5点を確認しておくと判断しやすくなります(一般的な整理であり、出典のある基準ではありません)。

  1. 非顧客に「使わない理由」を直接聞いたか
  2. 試作品や予約などで、対価を払う意思を確かめたか
  3. 成功の定義と撤退条件を、投資前に書いたか
  4. 追随されたあとに残る強み(技術・ブランド・販路・顧客との関係)は何か
  5. 既存事業の売上を食う(カニバリゼーション)度合いはどれくらいか

需要がない「空虚な海」に注意

競争がないのは、需要がないからかもしれません。解説記事では、中小企業が失敗する理由として、実は市場が存在しないこと、成功が見えると人が押し寄せて一瞬で消えること、特定企業の独占や大企業主導で入れないこと、経営資源や販売力の不足が挙げられています。競争がない理由を「まだ誰も気づいていないから」と決めつけないことが大切です。

近い枠組みとは、答えられる問いが違います。使い分けは次の表のとおりです。

枠組み答えられること答えられないこと
ブルーオーシャン戦略業界の常識をどう組み替えるかの設計非顧客が対価を払うか、追随されたあとどうなるか
5フォース分析既存市場の競争の厳しさの構造競争の外にある新しい市場の需要
アンゾフの成長マトリクス市場と製品の組み合わせで見た成長の方向各方向で何を確かめるか
VRIO 分析自社の強みが持続するか(模倣されにくいか)強みを何に使うか

ブルーオーシャン戦略で設計し、VRIO 分析のような枠組みで「追随されても残る強み」を確かめる、と組み合わせる使い方が現実的です。

前提が外れた事例から考える — 他分野の事例と失敗の型の探し方

ブルーオーシャン戦略が出すのは「非顧客層には新しい需要がある」という前提を置いたときの設計であり、判断を誤るのは、その前提が外れたときです。需要が実在しない、追随が早い、投資したあとに撤退しにくい、という外れ方があります。

芽吹いたばかりの若い苗
大きな設備投資の前に、小さく試して確かめる段階を置きます(写真: Ruslan Alekso / Pexels)

ラトリスで構造の似た事例を探したところ、ブルーオーシャン戦略そのものの事例は出ませんでした。そこで、前提の外れ方を示す失敗の型を2つ紹介します。いずれも、ラトリスが参照する公開記事にある記述の範囲です。

1つ目は、追随されて価格競争に戻る型です。「差別化戦略」の記事は、差別化が失敗した場合や、他社に同じことをされて同質になった場合、価格だけで売れる数が決まる価格競争になると説明しています。記事内の例では、定食屋Aだけの白米無料が、Bも始めたことで店を選ぶ理由でなくなります。新しい市場でも、成功が可視化されて模倣されれば同じことが起きる、という見方につながります。

2つ目は、巨額の投資で撤退しにくくなる型です。「ロックイン効果」の記事は、設備投資が巨額になると埋没費用(サンクコスト)が大きくなり、心理的に撤退を決めにくくなって、無駄を生む行動にエスカレートすると説明しています。需要を検証しないまま投資が先行する形と重なります。投資を決める前に撤退条件を置く理由はここにあります。

こうした失敗の型は、自社の業界の中だけを探しても見つかりにくいものです。ラトリス(Latris)は、公共記事80万件規模を因果関係や構造パターンに変換した World Graph から、同じ構造を持つ他分野の事例と失敗の型を出典付きで返す構造知検索サービスです。一文の問いを入力すると、次の5層のレポートが得られます。

  1. 問題の構造化: 誰が・何を・どう動かすかに翻訳する
  2. 関連知見: 前提の確認、相場観、論点の抜けを補う
  3. 構造の似た事例: 業界を越えた事例を、参照元記事つきで示す
  4. 失敗の型: 同じ構造で起きた失敗パターンを示す
  5. 統合・示唆: 与件に照らした示唆と、避けるべき型、次の一手をまとめる

レポートのあとは、同じセッションで壁打ちを続けられます。判断するのは人であり、ラトリスは判断材料を出典つきで揃える役割です。構造の似た事例がどれだけ出るかは問いの立て方にもよるため、問いを絞って試すと確かめやすくなります。

レポート例で出力の形を確認できます。試すなら、14日間の無料トライアル(開始時にクレジットカード登録が必要、Claude の契約が別途必要です)か、デモ依頼をご利用ください。

こんな人におすすめ / おすすめしない人

こんな人には、この考え方が合っています。

  • 既存市場で価格競争が続き、同じ土俵で戦うほど利益が縮んでいる事業責任者
  • 業界が当然視している要素のコストが重く、顧客が使わない理由を説明できる人
  • 社内提案の前に、成功談以外の材料(失敗の型や撤退条件)を揃えたい人

次のような場合は、別の検討が先になります。

  • 需要が既存顧客の中に見えている場合は、差別化や集中など既存市場の見直しが先です
  • 非顧客に一度も話を聞いていない段階で、設備や人員への投資が決まりかけている場合は、投資の前に聞き取りと小さな試験が先です
  • 自社の強みが追随されやすいものしかない場合は、先に強みの持続性を確かめます

よくある質問

ブルーオーシャンとレッドオーシャンの違いは何ですか。

レッドオーシャンは、既存市場で競合とシェアを奪い合う状態です。ブルーオーシャンは、競争を無関係にする未開拓の市場空間を指し、新しく作るものとされています。

中小企業でもブルーオーシャン戦略は使えますか。

考え方自体は規模を問いません。ただ、解説記事では、経営資源や販売・マーケティングの力が足りないことが失敗の理由に挙げられています。大きな投資を避け、小さく試して需要を確かめる設計にするのが現実的です。

4つのアクションはどう書き出せばよいですか。

縦に「取り除く・減らす・増やす・付け加える」を並べ、業界が当然視している要素を一つずつ振り分けます。最初に戦略キャンバスで競合との曲線の違いを見ておくと、どこを動かすかが決めやすくなります。

ブルーオーシャン戦略の成功率はどれくらいですか。

成功率を示す信頼できる数字は見当たりません。この理論には、成功例が選ばれていて失敗した試みとの比較がなく、失敗率を測れないという指摘があります。数字で期待を置くより、需要の検証を優先する考え方が一般的です。

競合が追随してきたらどうなりますか。

模倣されて差別化が薄れると、価格競争に戻ることがあります。そのため、技術・ブランド・販路・顧客との関係など、模倣されにくい要素が自社に残るかを、投資の前に確かめておきます。

撤退条件はいつ決めればよいですか。

設備や人員への投資を決める前が基本です。巨額の投資をした後では埋没費用が大きくなり、撤退を決めにくくなるためです。


投資の可否は、自社の状況と確かめた事実で決まります。上の確認項目は、その確かめ方を整理するための材料です。

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