事業再構築

事業構造改革の進め方|着手の順番と、社内の合意形成

公開日 2026年9月30日読了目安 約10分執筆: ラトリス編集部

事業構造改革の進め方|着手の順番と、社内の合意形成

事業構造改革は、事業の組み合わせと、それを動かす組織・人員配置・意思決定の仕組みを組み替える取り組みです。進め方で迷うのは「やるかどうか」よりも「どの順で手を付け、誰にどう説明するか」であることが多く、この記事ではその2点に絞って整理します。

事業構造改革の要点

  • 事業構造改革とは、事業の組み合わせ(ポートフォリオ)と、それを動かす組織・人員・意思決定の仕組みを組み替えること。国の補助金名の「事業再構築」とは別の話
  • 着手の順番には、整理先行・主力強化先行・新規育成先行・同時並行の4つの型があり、資金の余力と主力の回復可能性で合う型が変わる
  • 順番を決める前に、整理で浮いた資源の行き先(再投資先)を決めておくと、整理が止まりにくい
  • 合意形成は「取締役会」「事業部門長」「従業員・労働組合」「取引先・金融機関」で論点が違うため、相手別に説明の中身を分ける
  • 自社の業界に前例が少ないときは、他分野で不振事業を整理した企業の順番と、止まった場所を出典付きで確認しておくと判断しやすい

この記事は、主力事業の収益が悪化して改革を検討している経営者・事業責任者・経営企画の方に向けています。社内に大きな改革を経験した人が少なく、順番と説明の仕方を整理したい場面を想定しています。

事業構造改革とは何か(事業再構築との違い)

事業構造改革とは、成熟から衰退に向かう事業を縮小・売却し、成長が見込める事業へ人材や資金を振り向けていく取り組みを指す言葉です。法律上の用語ではなく、一般的な用法です。

同じ名前で混同されやすいのが、補助金制度の「事業再構築」です。こちらは国の支援制度の名称で、制度の内容は改定されるため、最新の公式情報で確認してください。この記事は補助金の説明ではなく、経営として事業の組み合わせをどう組み替えるかを扱います。

東京のビル群を望む景色
事業の組み合わせを変える判断は、個々の事業の損益だけでなく、会社全体の姿から考えます。(写真: LoboStudioHamburg / Pixabay)

改革の対象は2つに分けて考えると整理しやすくなります。ひとつは「どの事業を残し、縮め、育てるか」という事業の組み合わせで、もうひとつは、それを動かす意思決定の仕組みや人員配置です。民間の解説では、戦略や制度といった「ハード」と、意識や文化といった「ソフト」の両方が要り、意識が変わらない改革は元に戻ると指摘されています。

事業構造改革を分解した図。事業構造改革(事業の組み合わせ(不採算事業の整理、主力事業の強化、新規事業の育成)、動かす仕組み(意思決定の仕組み、組織・人員配置、改革の推進体制))
事業構造改革で組み替えるもの

着手の順番は4つの型に分かれる

着手の順番は、不採算事業の整理・主力の強化・新規事業の育成のどれを先に置くかで、大きく4つの型に分けられます。どれが正しいという話ではなく、資金の余力と主力の回復可能性によって合う型が変わります。

進め方何から着手するか合いやすい状況注意点
整理先行型不採算事業の整理、次に主力強化、その後に新規育成不採算事業が資金・人員を吸っていて、主力の立て直しにも余力が回らない事業部門の反発、取引先・金融機関への説明、雇用への配慮で合意に時間がかかる。整理で浮かせた資源の行き先を先に決めておく
主力強化先行型主力の立て直し、その余力で整理と新規主力の収益源が回復可能で、前提の崩れが小さい整理が後回しになり、不採算事業が資源を吸い続けやすい。回復シナリオの根拠を確認する
新規育成先行型新規事業を先に立ち上げ、育ってから整理主力のキャッシュに余裕がある新規が育つ前に主力が傾くと、両方が止まる。時間の読み違いに注意
同時並行型3つを一度に着手時間が限られている現場が疲弊して実行が頓挫しやすい。優先順位と担当を分ける

新規事業の育成を伴う場合、その立ち上げ自体に失敗の型があります。多角化や新規事業の進め方は別のテーマなので、ここでは「整理で浮いた資源の受け皿」として位置づけるに留めます。

順番を決める前に確認しておくこと

順番を決める前に、前提・回復シナリオ・再投資先・判断基準の4点を確認しておくと、途中で止まりにくくなります。特に、整理で浮いた資源の行き先が決まっていないと、整理そのものが先送りされやすいと言われています。

会議室の椅子とモニターが並ぶ様子
誰にどの順で説明するかを、着手の順番と一緒に決めておきます。(写真: Werner Pfennig / Pexels)

経済産業省が2020年に公表した事業再編実務指針では、日本企業で不振事業が優良事業のキャッシュに依存している場合や、再投資先の見通しが立っていない場合に、事業の切出しに踏み切れない傾向があると整理されています。検討対象に聖域を設けず、将来志向で、自社がその事業の「ベストオーナー」かどうかという観点から見直す考え方も示されています。詳細は原文で確認してください。

  1. 前提の確認: 事業を始めたときの前提(需要・価格・競合)が、いまも成り立っているかを確かめる
  2. 回復シナリオの確認: 立て直せるという見通しに、数字と時間軸の根拠があるかを確かめる
  3. 再投資先の確認: 整理で浮く資金・人員を、どの事業に回すかを先に決める
  4. 判断基準の文書化: 残す・縮める・売る・やめるの基準を、部門を問わず共通の言葉で書いておく

撤退や縮小そのものの目安については、損益だけでなく「前提が崩れたか」「回復シナリオに根拠があるか」「撤退コスト(契約・人員・信用)がどれだけかかるか」で見る考え方が一般的です。過去に投じた資金(サンクコスト)は、判断材料から外して考えます。

合意形成は相手ごとに論点が違う

合意形成で消耗するのは、全員に同じ説明をしてしまうときです。相手によって気にしていることが違うため、説明の中身を分けると、進み方が変わります。

相手論点進め方の考え方
取締役会・社外取締役判断基準と、撤退・再投資の考え方判断基準を先に文書化して共有する。事業再編実務指針でも取締役会の役割に触れられている
事業部門長自部門が整理の対象になることへの反発基準を全部門に共通で示し、部門を超えた全体最適の視点で説明する
従業員・労働組合雇用と配置転換会社単位で採用してきた慣行を踏まえ、配置転換の計画と一緒に説明する
取引先・金融機関事業の継続性と返済整理後の姿(残す事業と資金計画)をあわせて示す

説明の順番は、社内の意思決定の構造によって変わります。取締役会で基準を固めてから事業部門長、従業員という順に降ろし、取引先・金融機関には整理後の姿が固まった段階で説明する流れが考えられます。

雇用や配置転換には法的な要件があり、制度と個別事情で変わります。労務の判断は弁護士・社会保険労務士に、事業譲渡や減損などの会計処理は会計士・税理士に確認してください。

改革が止まりやすい型

改革が止まる場面は、Deloitte の見解では、属人的なリーダーシップによる独善的な意思決定、現場優先でグループ全体の最適の視点が欠けること、旧態依然の組織体制が続くことなどの特徴として整理されています。同社は、成功の要素として「意思決定機構の改革」「事業・組織構造の再編」「改革推進体制の組成」の3つを一体で進めることを挙げています。

実務では、次のような形で止まる場合があります。

  • 整理を先送りにして、不振事業を別事業の成長で埋め続ける
  • 3つの取り組みを同時に始めて、現場が疲弊する
  • 事業を変えたのに、前提(立地・規模・意識)が変わっていない

最後の型は、何を残し、何を変えるかを先に決めておくことで防ぎやすくなります。変えるのが事業の看板だけで、稼ぎ方の前提が同じままだと、成果につながりにくいためです。

他分野の事例と失敗の型から考える

自社の業界に前例が少ないときは、他分野で同じ構造を持つ事例と失敗の型を見ておくと、順番と合意の取り方の判断材料が増えます。ここでは、ラトリスの World Graph で見つかった出典記事から、失敗の型に当たる2件を紹介します。いずれも出典記事に記された範囲の紹介で、個社の経営判断の評価はしません。

ひとつめは、クラフトフーヅ・インクの沿革を記した記事です。多角化と買収を重ねた末に、事業部門の自主性が下がり、非食品事業の不振を食品事業の買収で穴埋めする状況になり、のちに非食品事業を分社化した経緯が記されています。「不振事業を別の事業の成長で埋め続ける」型の参考になる事例です。

ふたつめは、ベルファニーの記事です。店舗の立地や売場面積の制約で売上が減少し、2002年6月以降、店舗を深夜営業のコンビニ、ディスカウントストア、高級食材のスーパーに業態変更したものの、業績は回復せず、2003年3月に全13店を閉店したと記されています。「業態を変えても前提が変わらなければ回復しにくい」型の参考になる事例です。

こうした事例は、同じ業界の中では見つかりにくく、一般的な検索エンジンでは「同じ言葉」でしか探せません。ラトリス(Latris)は、同じ言葉ではなく同じ構造を探す構造知検索サービスです。公共記事80万件規模を因果関係・構造パターンに変換した World Graph から、次の5層レポートで整理して返します。

  1. 問題の構造化: 整理・強化・育成のどれが資源を吸い、どれが合意を難しくするかを翻訳する
  2. 関連知見: 前提の確認や、論点の抜けを補う
  3. 構造の似た事例: 業界を越えた事例を、参照元記事つきで示す
  4. 失敗の型: 同じ土俵での消耗、時間の読み違い、前提の持ち込みといった型を示す
  5. 統合・示唆: 自社の与件に照らした示唆と、次の一手の候補をまとめる

見つかる事例の質は、問いの立て方によってばらつきます。構造が遠いと分かれば採用しない、という見極めは使う側が行います。レポートのあとは、同じセッションで壁打ちを続けて、撤退計画の論点表やロードマップ案に落とし込めます。事例と失敗の型は出典付きで返され、判断は人が行います。

14日間の無料トライアルは料金ページから始められます(開始時にクレジットカード登録が必要で、Claude の契約が別途必要です)。レポートの形はレポート例で、自社の状況で試したい場合はデモ依頼で確認できます。

こんな人におすすめ / おすすめしない人

この記事は、順番と合意の取り方を整理したい人に役立つ内容です。

こんな人におすすめ

  • 主力の収益が悪化していて、整理・強化・育成のどこから着手するか迷っている経営者・事業責任者
  • 事業部門や取引先への説明の順番と中身を組み立てたい経営企画・管理部門の担当者
  • 自社の業界に前例が少なく、他分野の例を確認したい人

おすすめしない人

  • 補助金(事業再構築補助金)の申請要件を知りたい人。制度は改定されるため、公式情報を確認してください
  • すでに事業譲渡や整理解雇の具体的な手続きの段階に入っている人。法務・労務・会計の専門家への相談が先になります

よくある質問

中小企業でも事業構造改革は必要ですか。

規模より、主力の収益悪化が続いていて、不採算事業が人員や資金を吸っているかどうかで考えます。事業が少ない会社では、整理より主力の見直しや、事業の稼ぎ方の組み替えが中心になります。

途中で着手の順番を変えてもよいですか。

前提が変わったときは、順番を見直すのは自然な対応です。ただし、見直しの基準を最初に決めておかないと、先送りの理由になりやすくなります。「どの数字がどうなったら順番を変えるか」を先に文書にしておくと運用しやすくなります。

改革の効果は、いつ判断すればよいですか。

期間の相場は、公表資料で確認できた範囲では見当たりません。整理は比較的早く数字に出やすく、新規育成は時間がかかるため、取り組みごとに評価する時間軸を分けておく方法があります。

従業員への説明で、最初に伝えるべきことは何ですか。

改革の理由と、配置転換など雇用への対応の考え方を、あわせて伝える流れが考えられます。理由だけを先に伝えて雇用の見通しを後にすると、不安が先に広がりやすくなります。具体的な内容は労務の専門家に確認してください。

外部の専門家に頼まず、社内だけで進められますか。

判断基準の設計や事業部門との調整は社内でも進められます。一方、会計処理や雇用の手続きは制度と個別事情で変わるため、専門家の確認が要ります。社内に経験者がいない場合は、他分野の事例を確認して論点の抜けを減らす方法もあります。


事業構造改革は、順番と合意の取り方を先に決めておくほど、途中で止まりにくくなります。整理で浮く資源の行き先と、誰にどの順で説明するかを、最初の一枚に書き出すところから始めてみてください。

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